【基本情報】
田の中 勇(たのなか いさむ、本名:田野中 勇、1932年7月19日 - 2010年1月13日)は、日本の男性声優。
劇団東芸→テアトル・エコーを経て、青二プロダクションに所属していた。
東京都台東区出身。
【経歴・人物】
・青二プロダクションの創立メンバーの一人。『ゲゲゲの鬼太郎シリーズ』の目玉おやじ役を始め、極端に高い声を使用することが多い。地声は比較的低い方であり、『ゲゲゲの鬼太郎のオールナイトニッポン』では、有名な甲高い声と比較すると自身の地声が低いというギャップを、多少自嘲しながら紹介していた。『天才バカボン』の本官さん役などのように、ほとんどの役が一般に知られているものと比較すると、やや低い声質を使用している。『マリー&ガリー』では同キャラクターで甲高い声と低い声を瞬時に演じ分けている。
・2010年1月13日、心筋梗塞のため東京都世田谷区の自宅で亡くなっているのを家族によって発見された。77歳没。生涯独身だった。特に体調が優れないということはなく、心臓の病気もなかったという。『マリー&ガリー』第32話『ピザなのにパイ』の出演が最後の仕事となった。他に死後に発表された出演としては、『ゲゲゲの鬼太郎』第5期シリーズのDVD-BOXの特典映像で鬼太郎の高山みなみらレギュラー陣と目玉おやじで共演しているのと、同時に発売されたシングルCD『ゲゲゲの鬼太郎・妖怪パラパラ』で、高山みなみ、今野宏美(猫娘)、高木渉(ねずみ男)、八奈見乗児(一反木綿)、丸山優子(かわうそ)、豊嶋真千子(ろくろ首)、池澤春菜(アマビエ)、中山さら(呼子)と台詞共演したのが事実上の遺作となった。
【目玉おやじ】
・『ゲゲゲの鬼太郎』では1968年の第1期シリーズ以降、ゲーム版以外(キャストが一新されたPS2ゲーム『異聞妖怪奇譚』においては、初代の鬼太郎主題歌を歌っていた熊倉一雄が演じている)一貫して目玉おやじの声を担当。これらは数度行われた実写化においても同様である。
・1985年の第3期シリーズでは鬼太郎役が野沢雅子から戸田恵子に変更されるなど、第1・2期シリーズとは声優の一新が図られていた。目玉おやじも新キャストのオーディションが行われていたが結局相応しい後任が見つからず、田の中が続投になったという。これがきっかけとなり、1996年の第4期シリーズでも2007年の5期シリーズでも田の中が担当になった。田の中は一時期年齢を考え「5期ではもう担当しない」とも発言していたが、『世界妖怪会議』や初の実写映画版も担当した縁で続投することになった。
・アニメ雑誌に掲載された記事によれば、目玉おやじは近年ではマスコット・アイドル化されていることから苦労していたが、コミカルな表現が抑えられた『墓場鬼太郎』での目玉おやじのほうは新鮮で演じやすいと田の中は発言している。一方で当初は慣れずに戸惑いも感じる部分もあったという。何度か初期メンバー(鬼太郎役の野沢雅子とねずみ男役の大塚周夫)で演じる機会はあったが、『墓場』が三者揃った最後の共演となった。
・キャストが変更されていないこともあって、目玉おやじはモノマネのネタにされる機会が多い(特に多いのは『おい!鬼太郎!』である)が、本人はモノマネをする人物たちについて「みんな似てない」と語っている。田の中曰く、モノマネする人物は皆ただの高いだけの裏声になってしまっているという(田の中は、自身の目玉おやじ時の声について「あれは裏声を使っているわけではない」とも語っている)。ものまね芸人のコロッケが目玉おやじを田の中の前で披露(電話越し)した際は「良いですよ。だけどパワーがないね」と評している。
・『大胆MAP』(2007年9月22日単発SP)では、声優の素顔が見てみたいアニメキャラランキングの11位に目玉おやじが選ばれ、田の中への顔出し出演を依頼したが「私はランキングというものが大嫌いなんですよ」と顔出しNGである事を電話インタビューで語った。だが事務所のプロフィール用の写真で素顔を公開する事には了承した。墓場鬼太郎のDVDの特典でも、野沢と大塚がコメントを残したのに対し、田の中は一切出演しなかった。(読本では対談を残している)劇場版『ゲゲゲの鬼太郎・日本爆裂!』の特典では、田の中に次ぐ鬼太郎シリーズ出演歴を持つ砂かけ婆の山本圭子とコメントを残した。
・バラエティ番組の『めちゃ×2イケてるッ!』の「只今参上 色とり忍者」に目玉おやじ役として声のみで出演(ウエンツ瑛士と共に)したことがある。トークでは目玉おやじの域を超えて「どちらへ帰るんですか?」という質問に対して自分の住んでいる「三軒茶屋じゃ」と答えたり、ゲームにも参加し勝利するなど大活躍であった。なお、この時に田の中が見事に正解したお題とその答えを、後に放映されたアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第5期シリーズの中で目玉おやじが寝言で叫ぶ(「鬼太郎!緑色の食べ物はグリーンカレーじゃ!」)というシーンがある。なお同番組では「突然熱湯コマーシャル」にも出演し、「おい加藤、押すなよ」「殺す気かー!」など、お約束のやりとりを繰り広げ、「田の中さん若すぎる」とつっこまれた。 さらにオチでは、ドイツ系アメリカ人のハーフである事を弄られるウエンツに対して「ドイツ系のアメリカ人じゃから仕方ないのぉ」と話しながら素で笑ってしまい、ウエンツから「(台詞言いながら)笑ったろ!?」「俺の本当の父さんに謝れ!」とツッコまれていた。
・野沢雅子からは、自分より女性っぽいという理由で「田の子さん」と呼ばれていた。逆に田の中は野沢のことを自分より男性っぽいと語っている。大塚周夫はねずみ男の芝居をもう少し軟化させようと考えた際、オネエ言葉にしようと考え、田の中から指導を受けたという。田の中がそういった役柄が上手いことから、田の中の死後に大塚は上述のことを語りつつ、田の中には「(オネエの)気があった」と冗談めかして語っている。
・死去に際して、水木しげるは「目玉おやじの声はとりわけ印象的」とコメントし、野沢雅子や戸田恵子など鬼太郎を演じた声優及び「鬼太郎」で共演した歴代のレギュラー陣は涙ながらにその死を悼み、長らく鬼太郎として田の中と共演していた野沢は「代役なんていない」と断言している。
・普段は周囲から「タノさん」と呼ばれ親しまれていた。
【後任】
田の中の死後、持ち役を引き継いだのは以下の通り。
・青野武(NHKハイビジョン特集『鬼太郎 幸せ探しの旅~100年後の遠野物語』:目玉親父、『マリー&ガリーver.2.0』:ダ・ヴィンチ )